天ぷらの揚げ方泡と音で、揚がりを見る
/ 文:店主 戸澤
天ぷらを揚げているとき、温度計は使いません。見ているのは、鍋の中の泡の大きさと、聞こえてくる音です。お客様からよく「どうやって揚がり具合を見ているんですか」と聞かれますので、少しお話ししてみます。
この記事の要点
- 揚がったサインは、泡が細かくなる・音が軽くなる・素材が浮き上がるの3つ。大きく勢いのある泡が続く間は、まだ水分が多い状態です。
- 油の温度は素材で変えます。野菜なら160〜165度あたりが目安。温度計は使わず、火加減を素材ごとに調整します。
- 衣は混ぜすぎない。粉が少し残るくらいで止めると、さくりと軽い食感になります。
衣は、混ぜすぎない
まず衣です。しっかり混ぜたくなるものですが、混ぜすぎると粘りが出て、重い衣になります。粉が少し残っているくらいで止めます。
目指しているのは、さくりと軽い食感です。そのためには、衣の段階で余計なことをしない。ここは意外と大事なところだと思っています。
油の温度は、素材で変える
油の温度も一定ではありません。野菜であれば、160〜165度あたりが目安です。素材が変われば、含んでいる水分の量も、火の通り方も違いますから、それに合わせて温度を動かしていきます。
ただ、温度計を差して測るということはしません。火加減を素材ごとに調整していく、というやり方です。数字はあくまで目安で、実際に判断しているのは次の話になります。
泡が小さくなったら、引き上げどき
ここが本題です。鍋に入れた直後は、泡が大きく、音も激しい。これは素材の中の水分がまだたっぷり残っている状態で、中まで火が通っていません。
揚がってくると、様子が変わります。泡が細かくなり、音も落ち着いてきます。水分が抜けて、代わりに油が入ったサインです。ここを逃さずに引き上げます。
理屈でいえば、水分と油が入れ替わっているだけの話です。ただ、揚げながら頭で計算しているわけではありません。19歳から数えて25年、この音と泡を見続けてきましたので、体のほうが先に反応するようになりました。
揚がったかどうかの見分け方は、泡・音・浮き方の3つ
ご家庭のコンロでも、揚がったサインは同じところに出ます。温度計がなくても、次の3つを順に見れば分かります。
1. 泡の大きさ
泡の大きさは、中の水分が抜けている途中かどうかの目安です。大きく勢いのある泡が続いている間は、まだ水分が多い状態です。泡が細かく、衣のまわりに寄り集まるように変わってきたら、仕上がりに近づいています。
2. 音の変化
入れた直後の「ジュワジュワ」という低く激しい音が、「チリチリ」と高く軽い音に変わります。これも水分が抜けたしるしです。音は鍋を覗き込まなくても分かるので、ご家庭では泡よりも当てにしやすいかもしれません。
3. 浮き上がり方
水分が抜けて軽くなると、素材が鍋の底のほうから浮いてきて、油の表面近くを漂うようになります。箸で持ち上げたときに、ずしりとせず軽く感じるのも同じことです。沈んだまま動かないうちは、まだ早いと見ます。
この3つに、衣の色が整うことを合わせて確かめます。食材ごとに火の通り方は違うため、同じ時間で一律に判断しないのが大切です。えびのように火の入りが早いものと、れんこんのように厚みのあるものとでは、同じ鍋でもサインの出る早さが変わります。
素材ごとに、目指す食感が違う
同じように揚げても、素材によって目指すところは変わります。たまねぎは甘みを引き出したい。れんこんはさくりとした部分とほくりとした部分の両方を残したい。春菊は香りを立たせたいので、薄い衣でさっと。
つまり、引き上げるタイミングも素材の数だけあるということです。この判断のために、泡と音を見ています。
だから、揚げたてを
ちょうどよく揚がったものは、時間が経つと変わっていきます。せっかくその一瞬を狙って引き上げているのですから、できるだけ早くお出ししたい。
うちは全19席の小さな店で、カウンターが3席あります。揚げてすぐお出しできる距離で召し上がっていただく、というのがこの店の形です。「油が軽いね」と言っていただけることが多いのは、揚げ方と、この距離のおかげかもしれません。
よくある質問
天ぷらが揚がったかどうかは、どこで見分けますか?
泡と音です。鍋に入れた直後は泡が大きく、音も激しい。揚がってくると泡が細かくなり、音も落ち着いてきます。水分が抜けて油が入ったサインなので、ここで引き上げます。衣の色が整うことも一緒に見ます。
天ぷらが浮いてきたら揚がったということですか?
浮き上がりは、揚がったサインのひとつです。水分が抜けて軽くなると、素材が底のほうから浮いて、油の表面近くを漂うようになります。ただし浮き方だけで決めず、泡が細かくなっているか、音が軽くなっているかを合わせて見ます。
天ぷらの油の温度は何度が目安ですか?
野菜であれば160〜165度あたりが目安です。ただし素材によって水分の量も火の通り方も違うので、温度は一定にせず、素材ごとに火加減を動かします。うちでは温度計は使わず、泡と音で判断しています。
天ぷらの衣を軽くするコツはありますか?
混ぜすぎないことです。しっかり混ぜると粘りが出て重い衣になります。粉が少し残っているくらいで止めると、さくりと軽く揚がります。
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